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令和3年度 冬の企画展

 私古事記伝も、当月十三日全部四十四巻卒業、草稿本書き立て申候明和四年より書はじめ、三十二年にして終て申し候。命の程を危く存候処、皇神の御めぐみにかゝり、先存命仕り候て、生涯の願望成就仕り、大悦の至りに存じ候儀に御座候。慮外ながら御歓び下さるべく候
                     (「荒木田久老宛宣長書簡」寛政10 年6 月17 日付)
 寛政10 年(1798)6 月13 日、『古事記伝』最終巻を書き終えた宣長は安堵の息をつき、 その4 日後、友人荒木田久老に上記の手紙を送りました。 また、宣長は『古事記伝』を脱稿した年の10 月に書き上げた学問入門書『うひ山ぶみ』 の中で、次のようにも語る。

  己れ壮年より、数十年の間、心力をつくして、
  此記の伝四十四巻をあらはして、いにしへ学びのしるべとせり
                          (『うひ山ぶみ』宣長著)

 京都で『古事記』の本を購入し、賀茂真淵先生と出会い、「『古事記』研究は任せた」とバトンを受け取った。研究を始めてから35 年。文字通り「心力をつくして」続けた『古事記伝』執筆は、先生との約束でもあったのです。
 今回は、宣長の代表作『古事記伝』を主役として、その軌跡をたどります。
 『古事記』の評価はいかほどのものか。
 さあ、研究を始めようというとき、まず何から取りかかったのか。
 解読作業はどんなものか。
 宣長の『古事記伝』はどのように広まっていったのか。
 宣長学の集大成に丸ごと浸る、展覧会です。

  【会  期】   12 月28 日(火)~ 2022 年3月6日(日)※休館日を除く
  【展示総数 】  79 種98 点 ※内、国重要文化財53 点変更あり)


≪年末年始 休館のおしらせ≫

年末年始、下記の通り休館させていただきます。

12 月29 日(水)~2022 年1月3日(月)

●展示説明会  1 月15 日(土) 2 月19 日(土)(中止)
                        ※いずれも11:00 より(無料)
  ※ 新型コロナウィルス感染症拡大防止のため、
   2月19日(土)11:00~予定しておりました展示説明会をやむなく
   中止することとなりました。


  



『古事記伝』への道                 ◎……国重要文化財
『うひ山ぶみ』版本 宣長著
『古事記伝』も書き終わって一段落した宣長に、門人たちは乞うた。
   これからの自分たちの指針となる、学問入門書が欲しい――。
そこで、宣長がすさまじいスピードで書き上げたのが本書である。
「心力をつくし」たという言葉には、実感がこもっている。



◎『古事記』 宣長手沢本
『古事記』研究の最初は、本文の校合作業から始まった。

 『古事記』と名の付く本はたくさんある。しかも、奈良時代から人々に書写され伝わってきた本は、それぞれ少しずつ文章が異なる。

 どの文章が1000年前のものに近いのか?
 宣長が行った研究は、そんな果てしない作業なのである。
 宣長にも、わからないことはある。
 上写真の赤い矢印の部分は、宣長が読めなかった文字だ。
 注釈部分には、「写し誤りであることは間違いないが、その字が考えつかない」
だから、保留し、本文の部分にもふりがなは振らなかったのである。

 これを受け取る私たちは、
「なんだ、分からなかったのか」で終わらせてはいけない。
 次の頁が、宣長が読めなかった「免」の部分の『古事記伝』下書き。
 これだけの情報を調べ上げ、考えに考え抜いた後に出る
「わからなかった」という言葉だからこそ、重みがあるのだ。
◎『古事記伝』草稿本 宣長筆 巻37
冬の企画展の内容については、三重県博物館協会ブログ(仮)もご参照下さい。
≫ 三重県博物館協会(仮)ブログ 2022年02月 https://sanpakukyo.blog.fc2.com/blog-date-202202.html


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