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令和4年度 春の企画展

 十代 で和歌の魅力に触れた宣長は、仕事に研究にと忙しい毎日を送りながらも、歌を詠むことを決してやめず、生涯に1万首を超える歌を詠んでいます。京都で 学んだ二十代の頃には、和歌を好まない友人に対して「自分は和歌が好きで、熱中すると寝食を忘れてしまう。
あなたが和歌を好まないのは、その楽しさを知らないからだ」と言ったこと もありました。
歌会 で題詠したり、人と詠み交わしたり、旅先で詠んだりと、歌の楽しさに触れる中で、人はなぜ歌を詠むのか。歌が 人の心を 魅了するのはどうしてなのか。そも そも 歌とは何なのか…と次々に疑問が湧いてきます。賀茂真淵から基礎として学ぶように勧められた『万葉集』や、宣長を古典研究に目覚めさせた契沖の『百人一首改観抄』も、歌に関わるものばかり。宣長のもの学びの源流には和歌を読むこと・和歌を楽しむことがありました。
 人は 歌を詠む ものだ。 そう断言する宣長の72年の歩みを、"和歌を楽しむ"という切り口からご紹介します。

  
  【展 示 総 数】 80 種107 点(うち国重要文化財41 種)
  【会   期】 令和4年 (2022) 3月8日(火)~6月5日(日)
  【展示説明会】 3月19日(土)、4月16日(土)、5月21日(土)
          いずれも午前11時?(1時間程度)事前予約は必要ありません
  【休 館 日】 月曜日(祝日の場合は翌平日)
          ※GW期間中の5月2日(月)は開館いたします。
  【開 館 時 間】 9:00?17:00 (最終入館時間16:30)
  【入 館 料】 本居宣長記念館・本居宣長旧宅「鈴屋」共通
          大人400円/大学生等300円/小人(小学校4年生~高校生) 200円
  【住   所】 松阪市殿町1536-7
  【電   話】 (0598) 21-0312


【主要展示品】             ◎…国重要文化財

◎『排蘆小船(あしわけおぶね)』宣長著

 宣長は歌を詠むことについて「詠歌の第一義は、心をしづめて妄念をやむるにあり」といいます。心を落ち着かせるには、歌を詠むために題や言葉に思いをめぐらせるのが一番だ、ということなのです。
 『排蘆小船』は歌の起源や本質について問答体で述べた著作。罫線の1行に文章2行を詰め込む書き方や、わかりやすく欄外に見出しを書いている工夫などもおもしろい資料です。

◎『松の落葉』宣長筆

 『松の落葉』は、宣長が30 代~50 代頃にわたって書き継いだメモ帳。書物からの抜き書きや覚書、聞き書きと思われる内容を記しています。ここに、歌を考えるときの姿勢(体勢)について「歌を考えるときには正座するのがよい。(中略)また道を歩きながら考えると、距離の長さを感じることもなく、時間を無駄にすることがなくてよい(下画像矢印あたり)」と書かれています。宣長は『古事記伝』の執筆や門人の指導など研究者としての用事だけでなく、日中は医者として往診に出ており、忙しい毎日を送っていました。そんな中で多くの歌を詠むことが出来たのには、こんな秘訣があったのかもしれません。
← ◎『詠草会集』
 松阪の嶺松院(れいしょういん)で開かれていた歌会の会集。宣長は宝暦8年の2月11日に29 歳のときに初めて参加し、以後嶺松院の歌会は宣長の活動の場となっていきました。
 右から二番目の歌が宣長(当時は春庵と名乗る)の歌。
「文字鎖」宣長詠
      (寄託品・個人蔵)↓
題に沿って歌を詠み、さらに縦・横・斜めの全八方向から書くときに、それぞれの歌が交差するところには同じ字がくるようにした作品。宣長にとって歌を詠むことは、至上の楽しみでした。

◎「本居宣長四十四歳自画自賛像」本居宣長画賛

めづらしき こまもろこしの 花よりも あかぬ色香は 桜なりけり
(どんなに珍しい花よりも、どれだけ見ていても飽きないのは桜だなあ)
 自分の好むものを詰め込んだ自画像(44 歳のとき)に、宣長は花瓶に活けた山桜と、短冊や懐紙など詠んだ歌を記録するための料紙を描いています。宣長にとって、歌を詠むことがいかに重要であったかをうかがわせる画像です。

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