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令和5年度 夏の企画展

 宣長は、考え続けた人です。目で見て、耳で聞き、本を開く――そうした日々の体験を種に、宣長は思考をめぐらせ、ノートに書き残しました。次々に記し、たくさん溜まった言葉たち。そんな宣長の言葉を編集したのが随筆『玉勝間(たまがつま)』です。



言草の すゞろにたまる 玉がつま つみてこゝろを 野べのすさびに
(言葉が思いがけなくたまったので、美しい篭に摘もう。そうすれば、自分の心を伝えることが出来るし、よい気分転換にもなるだろう)

『玉勝間』は、そんな宣長の巻頭歌で始まります。
 全14巻(目録別)の大ボリュームで、1005にもわたる項目それぞれには、本からの抜き書き、聞き書き、注釈、地名考証、字音などの言語研究から、友人たちとの雑談の内容まで、宣長が興味関心を持ったものを多岐にわたって収録しています。
 混沌とした『玉勝間』を覗いてみましょう。宣長の意見に耳を傾ければ、教科書にのっていない、等身大の本居宣長が見えてくるかもしれません。

  会期  2023年6月6日(火)~9月3日(日) ※休館日を除く
  会場  本居宣長記念館 2階展示室
  総数  81種89点(内、国重要文化財33点)

●展示説明会
  6月17日(土) 7月15日(土) 8月19日(土) ※いずれも11:00より(要入館料)

      ◎…国重要文化財

今回は、宣長の随筆『玉勝間』が主役です。
玉勝間 たまがつま
 本居宣長の随筆集。全14巻(目録別)。項目立ててそれぞれの内容が載せられ、全1005項目にわたる。読んでもらうことを目的として、宣長がこれまでの記録や体験を編集しており、構成にも工夫が伺える。内容は、読書遍歴や書物の抜き書き、また賀茂真淵との出会い(松阪の一夜)などの自身の体験談、そして、地名考証などの研究に紐づくものも多く、宣長を知る上で一級の資料となっている。
 14巻の清書途中で没したため、大平の息子建正が引き継いで刊行した。刊行は、寛政7年(1795)から文化9年(1812)まで。

『玉勝間』版本 巻1


言草の すゞろにたまる 玉がつま つみてこゝろを 野べのすさびに



(言葉が思いがけなくたまったので、美しい篭に摘もう。そうすれば、自分の心を伝えることが出来るし、よい気分転換にもなるだろう)
 冒頭、宣長のつぶやきのような和歌で始まる。

 本展示では、展示室の各所に『玉勝間』で宣長が語るキーワードをちりばめています。

◎『玉勝間』草稿 第3冊 宣長筆


修正痕甚だしい『玉勝間』草稿。見開きは、宣長の桜への想いを綴った「花のさだめ」の項。何度も書き直し、読み手へ見せる工夫をする宣長の姿が見える。横一線に引かれるのは、板下書き(印刷前の原稿)終了の印か。

「本居宣長像」吉川義信画、宣長賛


 「絵の事」(『玉勝間』巻14)で「人物画は、顔は言うまでもなく、雰囲気、衣服の細部までよく似せるよう注意しなければならない」と言う宣長。そんな宣長が気に入っていたのは、名古屋の吉川義信という画家の宣長像であった。

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