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令和元年度 夏の企画展

 宣長は耳の人、古典の研究は単なる文字の研究ではありません。『古事記』を正しく読み解くことができれば、古代の人々の声を聴くことができると考えていました。古の世界を見る・聴くことを試みた宣長の支えとなったのが、たくさんのノートたちです。好奇心のままに書き綴った少年期のノートから、執筆のためのデータベースまで。ノートには当時の宣長の関心や、悪戦苦闘の思考過程が隠されています。古代の声・音にまつわる資料と共に、丹念な筆跡で書かれた、少年期から円熟期までの宣長の、そして研究者たちのノートを一挙大公開です。

 【期  間】 2019 年6 月12 日(水)~ 9 月8 日(日)
 【展示総数】 80 種100 点(※予告なく変更の可能性があります)
 【展示説明会】6 月15 日(土)、7 月20 日(土)
        ※いずれも午前11 時から(無料)
   ★夏休み期間中随時展示説明を行います。受付までお申し出ください。  
【主な展示品】

◎ 「 事彙覚書(じいおぼえがき) 」
本居宣長筆宣長が17、8 歳の頃に書き始めたと考えられるノート。地理のこと、節気のこと、官職のこと、仏教のことなど関心のある内容をさまざまな書物から抜き出し、項目に分けて書いています。今回は「古代の音」にちなみ、器物の項目から楽器について書かれたページを展示します。


◎ 「詞の玉緒」草稿 本居宣長著
『詞の玉緒』は、いわゆる「係り結びの法則」について実例を挙げながら解説した著作です。今回は、その草稿(下書き)を展示します。実例を示すため、まず八代集など和歌集から同じ用例の歌を抜き出し、データベースを作るところからのスタートです。




◎ 「中臣寿詞」本居宣長筆
「中臣寿詞」(なかとみのよごと)は、天皇の即位後、初めて行う新嘗祭 (にいなめさい)である大嘗祭(だいじょうさい)の儀式で「即位された天皇の御代が長くお栄えになりますよう…」と中臣氏が申し上げる詞。宣長は、藤原頼長の『台記別記』に記されるこの詞が、祝詞の古い形を伝えていることを発見したのです。古代の言葉を知る資料となる『万葉集』では省略されることも多い「てにをは」は、祝詞や宣命に残されているとして、宣長は祝詞・宣命を重要視していました。(画像は一部)



★ 初出品「松園管弦会之序」本居清島詠
「松園(まつのその)」で、初めて管弦の演奏会が開かれたことを祝う文章です。松園の主人は歌を詠むなどの雅事を好む人で、あるとき本町の商人・中里常岳が笛の名手だと聞き、熱心にその指導を願ったといいます。そこへ次第に人が集まるようになり、笛、琵琶、琴などを習って、管弦の会を開くまでになったのです。今回はその内容と共に、清島の文字と軸の長さにも注目! 途切れることなく、次へ次へと繋がっていくこの長さが、日本語の特徴なのかもしれません。
【伊藤宗壽氏寄贈】


(公益財団法人岡田文化財団 助成事業)
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