五月の宣長

◇ 5月

 さつき5月のサは神稲。稲を植える月の意(『岩波古語辞典』)。「田植る農業(ワザ)を、凡て佐(サ)と云ふ、(中略)又其業する月を佐月と云」『古事記伝』。
 むかしの5月は、五月雨の五月蠅い季節。暑くてジトジト。 「(須佐之男命の)泣きたまう様は青山を枯山なす泣き枯らし海河は悉く泣き干し、ここを以て悪神(あらぶるかみ)の音(おとない)狭蝿なす皆わき、万の物の妖いは悉くおこりき」『古事記』
 この「狭蝿」(サバエ)とは、『日本書紀』に「五月蝿」と書くように、陰暦5月の蝿のこと。騒がしくて、うるさくて仕方ない。そう言えば、「うるさい」も「五月蠅い」と書く。
  5月も下旬になると次第に暑くなってくる。


◇ 時候の言葉 (寛政10年書簡)
「向暑之節」(5月4日・野井安定宛)
「段々暑候ニ成申候処」(寛政9年5月9日・本居春庭宛)
「一両日は能天気相成、目切と向暑申候」(5月21日・三井高蔭宛)
「次第暑気相成申候」(5月24日・植松有信宛)


◇ 3つの大きな出来事
  1. 享保15年5月7日、松坂町本町、小津定利、勝の子として宣長誕生 。
  2. 宝暦13年(34歳)5月25日、松坂町日野町、新上屋で、賀茂真淵と対面する。
  3. 明和4年(38歳)5月9日、『古事記伝』巻2(再稿本)出来る。

◇ 5月の歌

    早苗
かりはてぬ かたへは麦の 秋風に 
      いつしかそよぐ 小田の若苗
                  (明和8年・42歳 )
    山家樗
山里は ただ青葉のみ 茂りあふ 
      をりにあふちの 花もめづらし
                  (安永3年・45歳)

※「木の様にくげなれど、樗(楝とも)の花いとをかし、枯れ枯れに様異に咲きてかならず五月五日にあふもをかし」『枕草子』


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