トントン、トントン これは大変だ。大変な本だ。宣長先生にお会いしたい。松坂に行きたい。行けば板木が彫れない。そうすりゃ先生が困る。今夜は徹夜だトントントン。
宣長には一つの信念がありました。
「本は出版されねばならない」ということです。
実際に、宣長は「出版」というメディアを有効に使いました。出版するにはお金がかかります。また版下書や校正などの手間もかかります。そして何より重要なことは、完成した原稿が必要と言うことです。これらのことを宣長は、門人の協力も得ながら、完璧に実行しました。それだけではありません。本の装丁や題名にもこだわりを持ちました。『草庵集玉箒』は稲懸棟隆、戒言、須賀直見、『古事記伝』、『古今集遠鏡』は横井千秋、『手枕』などは大館高門、『新古今集美濃の家づと』は大矢重門、『源氏物語玉の小櫛』は松平康定などの助力があって刊行されたのです。
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