この「松阪の一夜」はその後、歌になった。2つある。
松阪市在住の森岡さんが記憶する「松阪の一夜」は、作詞・作曲者不明。記憶をたどり書いてもらった歌詞は、
一、ほたるとびかう松阪の、夏の夕べの旅の宿、初めてあいし碩学の、つきぬ話に夜は更けぬ
二、ふみをきわめん心もて、たづね入りにしうたの道、わけいるままに老いにきと、かたる真淵を仰ぎみつ
三、教えとうとび師と仕え、学びはげみし宣長の、心に残るかの一夜、永久の別れとなりにけり
佐佐木信綱作詞・下総皖一作曲は、歌詞は、
一、軒の釣忍風にゆれて、ほたる火におう夜の窓、行燈のもとに語らふは、年たかき賀茂の真淵、うら若き本居宣長
二、若き宣長は今宵ここに、まみえし幸(サチ)を感謝して、けがれなき古代精神を、究(キワ)むべき案内(シルベ)問へば、ねもごろに真淵は答へつ
三、伊勢は松阪の旅の宿に、一夜(ヒトヨ)をうけしをしへぐさ、新上屋のくらきともしびは、学問の道の上に、永遠(エイエン)の光を放てり
この歌は「本居宣長大人顕彰会事業計画」に「一、「松阪の一夜」の唱歌・作詞作曲○佐佐木信綱作詞・下総皖一作曲(昭和二十七年十月発表)」とあるのでこの頃の制作であろう。この会は昭和27年8月1日、当時の松阪市長・庄司桂一が会長を務めた。
森岡さんのは、もう少し古いのかもしれません。
佐々木信綱作詞の曲は、歌を近藤悦子・針谷斐子さんのお二人、ピアノ演奏を針谷宏弥さんにお願いして収録していただきましたので、ぜひお聞きください。
(C) 本居宣長記念館
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