いろは歌は47文字を使って一つの歌とした傑作だが、これに代わる歌が古来多くの人により試みられた。宣長もことばに対して関心の深さでは人後に落ちるものではない。そこで作ったのが次の「雨降れば」である。
普及はしていないが、さすがに上手く作っている。
「同じ文字なき四十七文字の歌
あめふれは ゐせきをこゆる みつわけて やすくもろひと おりたち うゑしむらなへ そのいねよ まほにさかえぬ
」(『鈴屋集』巻5)。
大意を得るために漢字を充て、濁点を加えると
「雨降れば 堰関を越ゆる水分けて 安く諸人 降り立ち 植ゑし群苗 その稲よ まほに栄えぬ
」となる。
「いろはの四十七字は無情の歌にて、めでたからずとて、鈴屋大人、慰みにつくり給ふとて松坂書林、柏屋某より写
し来る。寛政十年といふとし四月五日出しにて五月十三日届。雨降れば 堰関を越ゆる水わけて やすく諸びと おり立ち植ゑし、むら苗、その稲よ、まほに栄えぬ
。」(『国学文献集解』近藤佶・P168)
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「柏屋」
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