現在、記念館ではリニューアルに向けて準備を進めていますが、
中でも重要なことが、2017年3月、リニューアルオープン後の活動です。
その一つの柱は展示ですが、喜ばしいことに新しい史料の寄贈が続いています。
少しずつご紹介していきたいと思いますが、
まず今回は、円山応震の宣長像をご紹介しましよう。
円山応震の宣長像
寄贈者は東大阪市の丸山保幸様です(2016年4月13日受領)。作品は紙本著色。
保存状態は良好です。
絵は、吉川義信が描いた宣長像をもとにしたものでしょう。

賛は大平です。
「しき島のやまと心を人とはは
朝日ににほふ山桜花、
此歌はみつからの像の上にかかれたる
うたなれは又かきたり、
わか大人のうつしゑ見れはうつしおみ
今のうつつにますことおもほゆ
大平」
箱書は、
「大平翁讃応震、鈴屋大人肖像」
「川端景庸主の吾師翁の御かたをものしておのれに此うはかきせよとありければすとて其ついてにかく、
さくら花ちりにしのちの木末にもなほにほひある朝日影かな、
城戸市右衛門大江千楯」
「懐書堂」
本紙 縦96.3糎・横30.0糎
川端景庸と懐書堂は同一人でしょうか。詳しくは分かりません。
さて、この画像の話を伺ったときに興味を覚えたのは、円山応震作という点です。
応震は有名な応挙から数えて三代目。
応挙−応瑞−応震
ちなみに応瑞は、「朝顔図」宣長賛(逸翁美術館蔵)が有名ですが、
応震は、記念館に賀茂真淵像があります。

応震の真淵像(記念館所蔵品)
この真淵像ですが、記念館での名称は「賀茂真淵像」ですが、箱書には「県居大人像、応震画」とあります。
実は収蔵庫には、箱だけしか残らないのですが、もう一つの円山応震の真淵像があります。
中身はないのですから、真淵像がありますというのも変な話ですが、
箱書は
「加茂大人像、円山応震画」、「大人明和六己丑年十月廿九日卒、文政八乙酉春。元貞謹蔵」
とあります。
箱が変わったという可能性はありません。
記念館蔵は箱の長さが41.1糎、長谷川元貞旧蔵は49.5糎で、軸の長さが違います。
では長谷川家旧蔵の箱はどうして収蔵庫にあるのか。
種明かしをすれば、殿町の長谷川紘一さんの土蔵から史料を頂いたときに、、
空っぽの箱でも、書かれた年次から何か参考になるだろうと考えたのです。
元貞は、魚町長谷川家の当主。馬琴書簡に所蔵の『東雅』を長谷川が買うとの知らせを歓び、また次のように言います。
「長谷川主ハ名ハ元貞、号六有とて、和漢の学者、風流家ニて、拙随筆玄同放言、燕石雑志なとも蔵弄あるよし被仰示、甚なつかしき心地せられ候」
(天保11,4/11付安守宛・『【日本大学総合図書館蔵】馬琴書簡集』P135)
記念館などで所蔵する「本居春庭像」疋田宇隆画と全く同じものを所蔵していました。
この真淵像も、本居家のものと同じものであった可能性が高いと思います。
きっとたくさんお金を出したので、大きい軸が手に入ったのでしょう。
さて、寄贈頂いた宣長像ですが、
リニューアル後の展示の中でみなさんに見て頂く予定です。
ご期待下さい。
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