◇  展示解説について #019

今回、記念館の展示の仕方を少し変えました。
いつもきていただく人や、またガイドボランティアさんなどはすぐに気がつかれるようで、 今のところ、おおむね好評です。

何が変わったのか。
「小見出し」です。
展示ケースは 全部で16あります。
これまでは各ケースにそれぞれタイトルが付いていましたが、
今回は、ケースにこだわらず、作品や史料のひとまとまり(だいたい3点から5点)ごとで「小見出し」を付けました。
たとえば「ていねいな字」とか、「さくら・さくら」、「講釈上手」などです。

変えた理由はいくつかあります。
まず、展示が難しいという声。
一番頭の痛いところです。

では、わかりやすく解説を書くとどうなるか。
まず、長くなる。
また、初心者向けになってしまうので、分かっている人は不満が残る。

さらには、解説だけ読んで、かんじんの作品や史料を見ない人も出てくる。
最初の一ケース、二ケースくらいまでは作品も見て、解説も読んで下さいますが、
だんだん解説だけ見て満足してしまう傾向があります。
(どれ見てもよく似た字ばかりの本ですから)

理由の二つめは、死んでしまう作品や史料を少なくするためです。
作品や史料が「死ぬ」とはどういう事か。
せっかく展示しても、ケースの隅っこまでは見学者の緊張が続かない、疲れてしまうのです。
あるいは一点ごとの説明をしていると時間が長くなるので省略されてしまうことが多い作品や史料です。
私も、短時間や長時間、説明時間はいろいろですが、ほぼ毎日、展示解説をしています。
ていねいに説明しても、やはり、省いてしまうものがあります。
ところが小見出しを付けて、
「ていねいな字」
と言うグループにすると、見るポイントが定まります。
すると、『古事記伝』や懐紙の一々の作品説明は省いても、
「ああ、ていねいな字」だなと、おおざっぱではありますが、
短時間で、展示の意図が分かっていただける。

たとえばここに展示した『古事記伝』は、内容も大事だが、まず「ていねいな文字」を見せたいのだな。
すると、無駄な展示品となることから、少しでも救済できるのではないかと考えました。

さて、今回の展示ではこういう小見出しが20余りあります。
小見出しの横には、更に簡単な解説が付いています。
写真は、 「シンプルな思考」 という小見出しに付けた解説です。



こうやって見出しをたどって展示室を一覧していただくと、
皆さんの中で一つの宣長像が描いていただけるはずです。

一度ご覧いただき、また感想をお聞かせ下さい。

さて、次の写真は、記念館の昔の解説です。
『古事記雑考』と、
「シンプルな思考」でも取り上げた、「本末歌」の解説2種です。

『古事記雑考』


「本末歌」の解説 2種



当時の解説は、今もきちんと五十音順に整理されて、館長室に置いてあります。
かなりの量なので土蔵に移そうかとも思うのですが、見てください、内容も濃いし、字も見事ですね。
(当時の職員の字です)
たまに出してはながめています。
いろいろ考えさせられます。
展示の仕方というのは、本当に難しいものです。


 



2014.3.22 

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