今回の展示の特色の一つが、「宣長の幕の内弁当」というケースです。
芝居の幕間に頂くのが「幕の内弁当」ですが、
記念館特製のは、今回のパールネットワーク展見学の間に、ちょっと見るだけで、
宣長の核心が分かるような品揃えです。
まず、小さな「そろばん」と、15歳の力作「神器伝授図」、
少年宣長の関心の有る無しが一目でおわかりいただけるでしょう。
好きな物は、鈴に桜に、和歌、源氏物語と数々ある宣長ですが、
まず桜。
「桜石」は、断面が桜の形の石です。コレクター趣味はない人だけど、
これは紙に包んで大事にしていました。
栞。宣長の吉野の桜の歌を、清水浜臣が書いています。珍品です。
分け見ばやしをりも花の吉野山なほ奥深くにほふこずゑを 宣長
栞にもあるように、桜といえば和歌です。
歌については、『和歌の浦』です。これは、10代から20代前半の和歌学習ノートです。
ページを埋め尽くす細かい字は、『曽丹集』や『住吉物語』の引用文です。
『源氏物語湖月鈔』は宣長の愛読書です。今回は、「絵合巻」を出しています。
なぜかな? 回答は次のケースにあります。
さて、では宣長の根本思想は、というと、
日本には、日本独自の価値観や世界観があるということでしょう。
『古事記』を研究した目的もそこにありました。
『神器伝授図』はその着想の最初のものです。ものすごい早熟ですね。
いやいや、自分の目を持っていたら誰でも気がつくことですが、みんなその目を失っているだけです。
また『直霊(なおびのみたま)』は、その結論です。
42歳の時の、とても美しい筆跡もあわせてごらん下さい。
このケースの展示品の最後は、芝山持豊卿からいただいた扇です。
美しい花の絵です。一見、オミナエシのようでもありますが、花の色が違います。
前回の「宣長探し」では、今回の展示は、一つ一つの展示品が、しっかりとした物語を持っていて、全体の説明が難しいと書きましたが、帆足京、田中道麿、クラゲなどの物語の幕間に、頭の中を整理して、また楽しんください。
一杯詰め込んであって、とても見応えのあるケースです。
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