『初版本玉がつま三の巻』

 初版本『玉勝間』巻3の影印本が出版された。
 宣長の随筆集として、岩波文庫にも収められ広く読まれる『玉勝間』だが、巻3に異本のあることはほとんど知られていない。そのことを発見し紹介した杉戸清彬氏により、問題の巻が影印本として刊行された。消された項目には何が書かれていたのか、なぜ記事の改編が行われたのか。ぜひごらん頂きたい。
 解説はもちろんのこと、書名にも杉戸氏の多年に及ぶ研究成果が凝縮されていて、宣長研究の上でも、また近世国学研究でも必見の書となるだろう。
 また本書は、石水博物館所蔵の状態のよい初版本を使用するので、くずし字のテキストとしても最適である。

 全84頁。杉戸清彬編。本体価格1.200円。
 和泉書院・和泉書院影印叢刊93(第五期)。


竹内浩三のアンソロジー『戦死やあわれ』

 「ふるさとの風や こいびとの目や ひょんと消ゆるや・・・」
 詩「骨のうたう」などで、今も若い人たちの心をとらえる竹内浩三のアンソロジーが出た。
 竹内浩三は、大正10年、三重県伊勢市に生まれた。宇治山田中学時代から、同級生・中井利亮らと回覧雑誌「まんがよろずや」などを出し、漫画から散文に至るまで多彩な才を発揮した。日本大学専門部映画科入学。17年召集され久居にあった中部第38部隊に入営。20年4月9日、フィリピンで戦死した。
 竹内浩三の遺品、日記、詩稿は、実姉・松島こうさんから松阪市に寄贈され、現在本居宣長記念館で所蔵している。

 全347頁。小林察編。本体価格1.000円。岩波書店・岩波現代文庫。