亡くなる直前の「本居宣長」像が寄贈されました


 8月、松阪市内在住の本居家ゆかりの方から、
「本居宣長七十二歳像」
「常盤雪行図(宣長賛)」が寄贈されました。
 寄贈者は、宣長の次女・美濃夫妻のお墓を守ってこられた方で、故人です。
 この軸は、美濃が嫁ぎ先に父・宣長の形見として大切に持っていたものです。
 故人の遺志により一周忌を迎える先月に、ご遺族から当館に寄贈されました。

「本居宣長七十二歳像」
「本居宣長七十二歳像」
「常盤雪行図(宣長賛)」
「常盤雪行図(宣長賛)」

 この宣長像は、過去には神奈川県の川崎市民ミュージアム、四日市市立博物館、また記念館でも借用して展示したこともありますが、ほとんどの方は初めて目にされるはずです。

 画家は京都の鴨川井特。松坂の富商で宣長高弟でもあった殿村安守の養成で松坂を訪れ宣長像を描きます。
 一つは鈴屋衣という正装の宣長像、これは本居家に留められ、現在記念館所蔵です、
もう一つが、好みの古代紫の羽織を着た、言わば普段着姿の宣長像です。
 今回寄贈されたのは後者、普段着姿で、手あぶりがあるところから、寒くなってきた季節、つまり一番最後の宣長像であると推測されます。
 こんな話が残っていました。
 隣の部屋からのぞき見て井特はこの絵を描いた。かろうじて描き上がったものの、上に賛を書くはずだった宣長は急逝して書き手がいなくなってしまった。本居家の分は、空白のままにされたが、あきらめきれない安守は、もう一つにはしかるべき人に賛をもらうことにした。
 ところがあろう事か、その人が失敗をした。
 情けなく思った安守だが、気を取り直して、腕の良い職人に繕わせた。
 その実物が安守から父を敬愛する美濃のところに譲られ、戦前に写真で発表されたことはありましたが、実物が確認されたのが、平成2年(1990)のことでした。
 その年10月30日からの本居宣長、「特別展示 宣長像のすべて」で二週間だけ公開されました。
 今この作品を見ると、ほとんど公開されなかったために色も鮮やかに残っています。
 顔は確かによく見る宣長ですが、ずいぶん印象が違います。
 何より、腕の良い職人の信じられないような技法には驚かされるはずです。
 今回は9月8日から9月23日まで、11月3日から11月23日まで公開いたします。

 「常盤雪行図」は月岡雪斎の描いた絵に宣長が賛を着けたもので、宣長の画賛作品として人気のあったもので、宣長没後は美濃が代筆をしています。この代筆作品は記念館に入っています。なおこの「常盤雪行図」は冬の企画展で公開予定です。

 

2015.9.7