『宣長の版本』が完成しました


 このたび、公益財団法人岡田文化財団の助成事業の一環として『宣長の版本』を作成しました。



 本書は、本居宣長が刊行した本で、記念館が管理する全てを記載したリストです。
 宣長の『古事記伝』など主要著作は、ほとんど全部が刊行されました。記念館の計算では、全部で50タイトルあります。
 宣長は、「学問の流通革命」をした人です。
 研究成果は本にまとめ、公開します。つまり出版です。
 門人には質疑応答を勧めます。師の説の誤りを訂正してもよいとも言います。
 また、宣長の学を慕う人は、参宮の途次に、また上京の途中、松坂の鈴屋を訪ねたのです。
 その「流通革命」、つまり学問普及のための強力な武器が出版でした。
 出版は入念に準備されて、実行されていきました。
 よく売れたので、実に様々なヴァージョンが生まれました。
 その全体を見ていただける、それが今回の目録です。

 まず、目録としての特色を自慢します。
 記載内容は、形態や特記事項などですが、一つの版本でもこんなに違うのかと驚くほど、一点一点には違いがあります。
 最初の解説にも書きましたが、版本調査に必要なのは定規ではなく、比較することと、本への惜しみない愛情だと言うことがよく分かりました。
 宣長の版本はたくさんのヴァージョンがあります。記念館収蔵本は、そのごく一部に過ぎませんが、ただ、伝来がよい。
初刷りは当然、宣長の加筆のある本もあれば、 今回の調査では田中大秀手沢本やら射和文庫旧蔵本が入っていることも判明しました。
 一見すると無味乾燥な目録ですが、 各項目には、その本の内容や完成年月日など基礎的なデータも記してありますので、 ガイドブックとしてもご利用頂けます。
 珍しい写真も入っています

 次に読み物としての特色です。
 出版された50点の著作には、それぞれにドラマがあります。
 師の賀茂真淵から突き返されたり、友人との共同出資で出されたり、 浜田藩主・松平康定の強い要望で刊行されたり、プライオリティーの問題が出てきた書物もあります。
 本居家に無断で刊行された本ですが危うく発禁になりかかったものもあります。とんでもない誤植もありました。
 ただ、何れの本にも共通するのは、よく売れたと言うことです。
 名古屋に永楽屋東四郎という大きな本屋があります。
『古事記伝』など宣長の主要著作を刊行した本屋として有名ですが、そこの神棚には宣長が祀られていたそうです。

【本の概要】
 A4サイズ・157頁(口絵含む)・発行部数1,000部
 無料配布
 配布先:ふみの森探検隊隊員(賛助会員)、宣長十講参加者、公共機関など、また200部は希望者に贈呈します(入館者優先)。

【関連事業 】
 昨年夏、「特別展 宣長と出版の世界 ホンと !  宣長」と、関連イベントを開催しました。
 また、今年の冬には、リクエストにお答えして、新しい構想で冬の企画展「宣長と出版」を行う予定です。

 

 

2015.3.7