宣長流 古典の楽しみ方 <5>   

5,「手」で読む 

 宣長が机に向かって本を読む姿は、たとえば「宣長読書像」〔1ケース〕や「本居宣長四十四歳自画自賛像」〔6ケース〕などが参考になるでしょう。

  私が宣長の読書風景を想像するとき、関心が二つあります。一つは、小さな声で読んでいた、ひょっとしたら黙読ではなかったのではということ。もう一つは「手」です。

 本を読むのは「目」も大事ですが、「手」も大事です。
 本を読む時、みなさんは手は何をしていますか。本を持つ、ページをめくる。指でなぞる。書き込む。
 借りた本の隅っこを折るのはよくないと宣長は注意していますが、私たちが先生から注意されたのは本の下隅でめくってはいけないということ。ましてツバをつけるなど言語道断だと言われました。
 これは本の下隅が大事だからです。

 宣長の使った『古事記』〔2ケース〕や『日本書紀』〔4ケース〕をよく見てください。
下隅が汚れていますね。立派な人がよく読んだ本を「手沢本(しゅたくぼん)」と言います。「沢(たく)」は光る。「光沢」です。よく使った本は、手の脂で光ってくるのですね。

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