midashi_v.gif 『源氏物語玉の小櫛』

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 本居宣長著。9巻9冊。宣長が『源氏物語』を最初に読んだのは、今井田時代、つまり19歳から21歳だとされている。29歳に始まった松坂での講釈も約40年に及ぶ。その宣長の源氏研究の集大成である。既に宝暦13年(1763)、『紫文要領』で源氏論を展開した宣長は、それに補筆し本書を執筆しようと企図したが、『古事記伝』などで多忙のために断念していた。それが、浜田藩主松平康定の懇望により再開、完成した(藤井高尚の序文)。寛政8年(1796)成稿し、同11年刊行。巻1、2は総論(『紫文要領』に加筆)。3は年立て論。4は本文考勘。5から主要語彙の注釈。

 宣長は、「物語」の正しい理解が、『源氏物語』の正しい理解につながると考え、「蛍巻」に書かれた光源氏と玉鬘二人の「物語」論を精密に分析する。そして「此段のこゝろ明らかならざれば、源氏物語一部のむね、あきらかならず」という。では、この『源氏物語』の根底にあるのは何か。宣長は「物のあはれ」だという。「此物語は、よの中の物のあはれのかぎりを、書きあつめて、よむ人を感ぜしめむと作れる物」であり、そこに儒仏の倫理観を持ち込んでも意味がないことを主張する。
 注釈の態度は、一語一句についてその語感や文脈を精確に読解しようとする。

 本書により、『源氏物語』が、それまでの好色の戒め説や、仏典との関わりから解き放たれ、物語として読むことが出来るようになった意義は大きい。これ以後の源氏研究を「新注」と言い、それ以前と分ける。

【翻刻】 『本居宣長全集』4巻。


>> 「板木彫刻料」
>> 「紫式部」
>> 『紫文要領』
>> 『源氏物語年紀考』
>> 『手枕』
>> 「講釈」



(C) 本居宣長記念館


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