ら ん |
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和歌子
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ら ん |
宣長さんが作ったの? |
和歌子 |
宣長が考案し、鈴を買ってきて、実際に作ったのは春庭です。 |
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ら ん |
どうして36なの? |
和歌子 |
宣長さんは何も言っていませんが、36と言えば、三十六歌仙じゃないかしら。 |
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ら ん |
どんな音がするの? |
和歌子 |
さやさやという音色だそうです、今も、上手に振るといい音がします。少し手前に引っ張って後の板に当たらないように鳴らすのがコツです。 |
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ら ん |
ほんと。いい音がする。 |
和歌子 |
以前、岡村光祥(ミツヨシ)さん千恵子さんご夫婦は、この音色を「秋風が立ちはじめた十月の午後四時ごろの感じ」と表現されました。お二人は全盲ですが素晴らしい聴覚を持っておられます。足立巻一さんの『やちまた』に感銘して松阪に来られました。
でも、この音、宣長さんが聴いた音ではないの。本当の鈴は、形見分けのようにして、一つずつお弟子さんが持っていってしまったのよ。今の鈴は、それを惜しんだ春庭が、友達、これは殿村安守たちらしいけど、に作ってもらったものなの。聯(レン)という後の板は、その時に保存のために作られた物だと思うわ。 |
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ら ん |
ところで、どうして鈴なのだろう。 |
和歌子 |
さっき引いた宣長の歌に、
「物むつかしきをりをり引なしてそれが音をきけばここちもすがすがしくおもほゆ」
とあります。勉強に疲れた時の気分転換、集中力を高めるのかしら。 |
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「柱掛鈴」部分
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【注】
「三十六歌仙」
平安時代中期に藤原公任が選んだ、三十六人の優れた歌人、例えば、柿本人麿、紀貫之、また小野小町なども入っている。その後も、後六六撰、中古三十六歌仙が選ばれたり、「西本願寺本三十六人集」や、歌仙絵などのモチーフとなり、和歌だけでなく、美術史でも大きな影響を及ぼした。宣長も寛延2年10月、20歳の時に『三十六歌仙』を写している。 |
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