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宣長は、学問入門書『うひ山ぶみ』の中で、そう言います。重要なのは、「自分で考える」ということです。
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【主要展示品】 ◎…国重要文化財 ![]() ◎『うひ山ぶみ』再稿本 宣長筆 この度、本書を執筆することについて、早くから教え子たちに熱心に勧められていたのだが、長年忙しく、聞き過ごして来た。だが今は、『古事記伝』も完成したのだからと、またしつこく言うので、さすがに聞き流すことも出来なくなって執筆した。急に思い立っての仕事であるので、言いたいことで漏れたものもきっと多いだろうが、初学者のためには、いささかの標(しるべ)になることもあるだろう。 |
![]() ▲◎『うひ山ぶみ』再稿本 宣長筆 清書でありながらも、多くの修正が残る |
いかならむ うひ山ぶみの あさごろも 宣長は、自身が執筆した学問入門書『うひ山ぶみ』の奥書でそう述べます。 |
◎『葛花』再稿本 宣長筆 |
![]() 天地が存在することも、地が球体で宙に浮いているという説も、大いに不思議なことだ。そんな不思議な天地の間に生きながら、それを不思議と思わず、神代を疑って「有り得ない」と思うのは、愚か以外の何であるか。己の人の身も考えよ。目で見、耳で聞き、口で話し、足で歩き、手で様々なことを成すのも、すべて不思議なことで、鳥や虫が空を飛び、草木が花を咲かせ実をつけることなども、すべて不思議なことではないか。物が動物に化けたり、狐や狸が人に化けたりということは、もう不思議中の不思議である。 天地万物すべてにおいて、結局のところ世の中には説明のつかないことが多く、たとえ聖人といえども、その理の全てを理解することなど出来はしない。だから、人の知恵には限界があり、小さい者であることを自覚し、神の御仕業がこの上なく不思議なことであることも、理解しなければならない。 |
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そんな宣長自身も、夏の夜、不思議な空を見た。 当時の宣長の日記には、そのときの様子が事細かに記されています。 今夜、北の空が赤くなっていた。10時ごろは遠くの火事のようにも見えたが、深夜0時には赤みがものすごく大きくなり、白い筋が現れたり消えたり。やがて赤い光が広がり、東から西の半分まで覆い尽くした。そして、午前2時ごろには消えていった。宣長の目は不思議に瞬きながらも、冷静さを失いません。 ![]() |