今年2019 年は、本町で豆腐屋を営む稲懸
家の息子・大平 が、本居宣長の養子になって220 年目を迎える節目の年です。そこで冬の企画展では、大平と宣長、親子ふたりに焦点を当てた展示を行います。宣長の友人であり門人でもあった父・棟隆に連れられて、少年の頃から宣長の元で学んだ大平。宣長の息子春庭の失明を受け、寛政11 年(1799)に本居家の養子となりました。大平は、自身が養子に撰ばれたことについて、学問に秀でていたからではなく、先生を思う心が他の誰よりも強かったからなのだと振り返っています。宣長は大平の温厚な人柄と、学問に対する熱意を評価したのです。師と弟子ふたりのやりとり、大平が大切にした宣長の教え、周囲の人々との交流の記録などから、宣長と大平、そして当時の松坂における宣長門の人々の様子にも触れる展示です。
【会 期】 2019 年12 月10 日(火) 〜 2020 年3 月8 日(日)
【展示総数】 84 種157 点(うち、国重要文化財30 点)
【展示説明会】 12 月21 日(土)、1 月18 日(土)、2 月15 日(土)
いずれも11 時〜(1時間程度:無料)
【休館日】 月曜日(祝日の場合は翌日)、
年末年始(12 月29 日〜1 月3 日)
<期間中のイベント>
第7講:12 月21 日(土)
「宣長と風土記」 千葉大学 兼岡理恵 先生
第8講: 1 月18 日(土)
「古典をよむ、今を見る」 本居宣長記念館 西山杏奈 先生
第9講: 2月15 日(土)
「『古事記』を読み、今を知る―『古事記伝』の「直毘霊」―」
國學院大學 森瑞枝 先生
【時 間】 14:00〜15:00
【会 場】 本居宣長記念館 2階 講座室
【資料料】 100 円(事前申込不要) |
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【主要展示品】 ◎:国重要文化財
「本居大平七十八歳像」
長谷川素后画、本居大平賛
賛「真直
なる やまとこゝろに まなびては 神のまことの 道は得てまし」
最晩年の大平を描いた肖像画です。上下姿で、「歌うた杖づえ」と名付けた笏を手にしています。これは、考え事をしたり歌を詠んだりする際に手慰みにするものだったようで、宣長が書斎で使っていた笏を真似て作ったと言われています。大平の肖像画はこのほかにも数点が確認されていますが、絵によって賛の歌に異
同があり、何度も悩んで詠んだ歌だったことが知られています。大平の実直な性格が表れているようです。
長谷川素后は、丹波出身の画家です。
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◎「済世録」 宣長筆
「済世録」は診察と処方の記録。宣長の医者としての側面を知ることのできる資料です。今回展示するのは、寛政5年(1797)正月元旦、宣長64 歳の年の仕事始めの記録です。朝6時から方々に新年の挨拶回りをした後、さっそく診察に出かけています。学問をするためには家業を疎かにしてはいけないという信念を持っていた宣長の仕事ぶりが分かります。
この日の患者は5名。中には、「つしまヤ彦一(竹内元之)」や、なんと「田丸ヤ十介(後の本居大平)」といった門人の名前も確認できます。 |
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『
寿春居士伝
』 本居大平編
宣長の『玉鉾百首』に、先祖を明かにし、大切にしなければならないという教えがありました。本書は、大平が高祖父である寿春居士の百五十年忌に際して、宣長の教えを踏まえて先祖のルーツを調査したときのものです。家系を遡ると、もとは松阪と関わり深い浜田の人であった寿春居士が、「石見くずれ」(お家騒動)によって松阪へやって来たこと、その寿春について、親戚で宣長の門人でもある須賀直見の祖母から聞いた話、名字の由来などをまとめています。 |
◎「詠草会集」/ ◎「
嶺松和歌集
」
松坂新町の樹敬寺
の塔頭
・嶺松院
で開かれた歌会の記録。宣長が生まれる以前より行われていた会
でしたが、歌集としての記録は宝暦2年(1752)以降のものがまとめられています。宣長がこの歌会に初
めて参加したのは宝暦8 年(1758)2 月11 日。次第に会の中心人物になっていったと考えられています。
歌集に「嶺松院」の名前が冠せられるのは「宝暦十一年辛巳 嶺松和歌集 其十」からで、今回はそれ以前
の「詠草会集」も併せて公開。松坂商人たちの文化力のひとつの結晶をご覧いただきます。 |
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