◇ 展示の内容

今回の展示のテーマは、本居宣長の情報処理の仕方です。
宣長の勉強法と言えば『うい山ぶみ』という本が有名です。
そこでは、まず目標を定めなさい。方法より継続が大事だよ、
とていねいに学習方法が説明されていますが、
今回の展示はその実践編です。
蔵書整理や読書法、旅行の仕方、データ処理の方法など大学者の舞台裏に迫ります。
中でも、少年の頃から好きだった地図と系図、その代表作とも言える『神器伝授図』(15歳)と、
『大日本天下四海画図』(17歳)は、国学者本居宣長の出発点とも言える力作です。
特に後者は夏期限定公開となりますのでこの機会にぜひご覧下さい。
この他に、「紀伊の海」と題して和歌山の地図や沿岸の景勝地の図解、
イルカの生態聞き書きなどを集めたコーナー、富士山に登った記録。
またコンペイトウなどの珍しいお土産の記録(『音信到来帳』)、「本居宣長七十二歳像」も展示します。
どのケース、資料から見ていただいても、
宣長という人はこのように物を観察し、整理し、考えていたんだ、
と感じていただけるはずです。
面白くてきっと役に立つと思います。
◇ 主な展示品 ◎国重要文化財

◎『神器伝授図』1巻
◎『源氏物語湖月抄』版本25冊
◎『大日本天下四海画図』1幅
◎「本居宣長七十二歳像」1幅 鴨川井特画
「町人像」1幅 鴨川井特画
「鈴屋集仕入元高の覚」1通。
出版経費など印刷の具体的なことがよくわかる珍しい資料。
「熊野図」1舗 本居春庭写
「牟婁郡名所」1巻
※熊野路は歩いたことがない宣長ですが地図やこのような絵で
大体の感覚をつかんでいたようです。
◎「産田神社由来」1通 宣長筆
「すだれ貝の香合」1合 大平箱書
「貝尽重箱」1段(本居家使用)
◎「端原氏系図」1冊 ※架空の系図
☆ 毎月第三土曜日(7/19・8/16)11時から展示品説明会を行います。〔無料〕
◇ 「宣長の思考法」展への誘い

◇ 発見・驚き・感動が宣長の原動力
宣長は35年もかけて『古事記伝』を執筆しました。
医者をやりながら、また近所付き合いや、家計簿だって書きます。
忙しい毎日の中で、どうしてそんなすごい仕事ができたのでしょうか。
それは、まず目標を決めること。そして、毎日の「ささやかな発見」だったのです。
前回の展示で取り上げた『玉勝間』(タマガツマ)は、
そんな宣長の「トリビア」を集めた本です。
たとえば、本に挟む「栞」と言う言葉はこんな頃からあったんだなあ。
カラスは鳴き声から名前がついたのかな。
オランダ人に日本語を発音してもらうと・・など、
人から見たら「それがどうしたの」と聞かれそうな発見や驚き、感動。
これがあったから毎日が楽しくて、頑張ることができたのです。
そんな発見の中から多くのものが『古事記伝』などの研究に使用され、
残ったものを集めたのが『玉勝間』です。
◇ 発見したものを整理する 宣長の情報処理
では、毎日毎日たまってくる「宣長版トリビア」をどのように整理し、
研究に活用するのか。それが今回のテーマです。
たくさんの本を読み、往診のために歩き回り、人の話を聞き、考える中で
色々な発見があります。それをどうするか。
宣長は、次の五つの方法を上手に使っていました。
1,縦軸と横軸で位置付けを決める。
2,本と末を判断する(ランク付け)。必要度を考える。
3,図解。
4,データを集める。
5,ていねいに書く。
ではその五つの方法を紹介してみましょう。
>> 五つの方法
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