◇ 展示の趣旨

寛政元年(1789)、60歳になった宣長は、いよいよ自分の学問の完成を目指します。
自画像を描き、『古事記伝』執筆も最終段階へと入り、『古今集遠鏡』、『玉勝間』、『うひ山ぶみ』など代表的な著作も次々に執筆、刊行されます。それまでの机に向かう生活から、「行動する宣長」への転身です。名古屋への学問普及の旅、紀州徳川家への仕官と藩主への御前講義、京都での公卿への講釈では、いずれも大きな成果が得られました。
一方、諸国からの来訪者も増加します。家の中も、長男春庭の失明と養子大平の入家、三人の娘の結婚と重大事件が続きます。このような多忙な中で、静かに自分の生涯の幕引きの準備も進んでいきます。そんな密度の濃い寛政年間(1789〜1801)の宣長の足跡を追います。特に、寛政年間に執筆、刊行された 全著作23種83冊の一挙公開 は初の試みです。13年間4640日
の持つ重みを実感していただけると思います。
◆ 展示点数
全80種(重文35種)

◆ 主な展示品

「本居宣長六十一歳自画自賛像」(国重文)
紀州藩主から拝領した「板文庫」
自分のお墓の下見に行った「山室山行詠草」(国重文)
奈良の大なべ、小なべ古墳をめぐった「寛政十二年紀州行日記」(国重文)
京都での講演の成果「富小路貞直卿餞別長歌」
最晩年に全精力を傾注して執筆した『続紀歴朝詔詞解』草稿・再稿本(国重文)は、真淵先生との約束を果たさんとする、また国学者としての信念に基づく気迫に満ちた筆跡です。
「帆足京短冊」熊本からやってきて『古事記伝』を筆写した15歳のお嬢さん帆足京(ホアシ・ミサト)さんの水茎の跡。
◇ 寛 政 年 間 の 宣 長

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